これは、2003年7月19日、ここ有馬温泉に開館した有馬玩具博物館誕生の物語です。
さかのぼること四半世紀、私(西田明夫:有馬玩具博物館館長)と金井啓修さん(陶泉御所坊社長)は長野県白馬村で知り合います。当時はペンションのオーナーとそのお客様だった2人が、時が過ぎてそれぞれ、おもちゃデザイナーと名旅館の社長へとなります。
ある時、有馬で展覧会をしないかという誘いが金井さんから舞い込みました。そこに参加したのが私とともに「ビーンズ・スタジオ」というアトリエをしていた加藤裕三でした。加藤はグリコのおまけデザイナーを経ておもちゃを作っていました。こうして3人が巡り会い、私達の間に1つの構想が生まれました。
有馬をこよなく愛する金井さんには、以前から「有馬から文化を発信したい」という強い思いがあり、3人がたどり着いたのが「おもちゃ」でした。ここ有馬は、数百年前に「木地師」が住み着き木工をしていた土地であり、また有馬のある兵庫県は日本のからくりのルーツだといわれています。つまり偶然のような必然がここにはあったのです。
そこで最初のステップとして、おもちゃのお店「ALIMAL
I」を始めました。ところが、オープンから1年ほど経ったある日、加藤が身体の不調を訴えます。検査の結果は「癌」。しかも余命は1年でした。翌年5月5日、加藤は博物館の夢を抱きながら帰らぬ人となりました。加藤が息を引き取る数日前、岡山県の現代玩具博物館の館長を務めていた私のところへ1本の電話があり、苦しげな声で「後はよろしゅう頼んます…」と言い残しました。加藤が思い描いたおもちゃの世界を、旧知の友人である私なりに形にしたもの、それが有馬玩具博物館です


故・加藤裕三が想い描いた,“動くオモチャの博物館”のイメージ。
絵:中崎宣弘 氏